法律相談あれこれ
弁護士 作前千春がお答えします
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             同時死亡の推定

Q.私の夫と息子は、旅行中交通事故にあって死んでしまいました。息子は9歳であり、特に遺産などはありませんが、夫については不動産や預金、株式など相当程度の遺産があります。夫の親戚は、夫の母親のみなのですが、夫の遺産の相続はどうなるのでしょうか。

A.法律上、被相続人に子がいる場合は、子が相続人となります(民法887条1項)。子が相続の開始以前に死亡している場合は、その者の子(被相続人の孫)、その者の子も相続の開始以前に死亡している場合はそのさらに子(被相続人の曾孫)が相続人になります(同条2項、3項)。
そして、子、孫、曾孫がいない場合は、被相続人の直系尊属、すなわち被相続人の父母等が相続人になります(民法889条1項1号)。
また、配偶者は常に相続人になります(民法890条)。
すなわち、被相続人に妻がいて子がいる場合は、その妻と子が相続人になり、妻がいて子、孫、曾孫がいない場合は、妻と被相続人の父母等が相続人になるということです。
そして、妻と子が相続人である場合、妻と子の相続分は各2分の1であり(民法900条1号)、妻と被相続人の父母等が相続人である場合、配偶者の相続分が3分の2、被相続人の父母等の相続分が3分の1になります(同条2号)。
さて今回のケースでは、先に死亡したのが夫か、息子かであなたの相続分が違います。
まず、夫が息子より先に死亡した場合、まず配偶者であるあなたと息子が相続人となり、その相続分は2分の1です。そして、息子がその後死亡しており、息子の相続人は直系尊属(母親)であるあなたしかいないので、次は息子の財産をあなたが相続することになります。
ここでいう息子の財産には、夫の死亡時に息子が夫の財産を相続した分も含みますので、結果的にあなたは夫の財産を全部相続することができます。
次に、息子が夫より先に死亡した場合、息子の相続人はあなたと夫ということになります(しかし、息子の財産はないということなので、実際はこの相続を考える必要はありません)。
そのあと、夫が死亡していますが、この時点では夫に子がいないことになるので、相続人となるのは、あなたと夫の母親ということになります。そして、その相続分は、夫の母親が3分の1、あなたが3分の2となります。
このように、@夫が先に死亡した場合は、あなたは夫の財産をすべて相続することになり、A息子が先に死亡した場合は、夫の財産についてのあなたの相続分は3分の2になります。しかし、今回のように同じ場所で同じ事故によって死亡した場合、どちらが先に死亡したか立証がかなり難しくなることもあります。
そこで、法律上、数人の者が死亡し、そのうち誰が先に死亡したか明らかでない場合は、同時に死亡したものと推定するとされています(民法32条の2)。
そうすると、これらの死亡した者同士では相続が生じないことになりますので、今回のケースでも、夫の財産は息子に相続されることはありません。したがって、夫の相続人はあなたと夫の母親になり、その相続分はあなたが3分の2、夫の母親が3分の1となります。
もっとも、この規定によっては、同時に死亡したと推定されるだけですので、夫が先に死亡したことを証明することが出来れば、@のようにあなたが夫の財産を全部相続することも可能です。

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