法律相談あれこれ
弁護士 吉川法生がお答えします
           書面によらない贈与

Q:先日、友人から高価な絵画をもらいました。そのとき、友人は、「この絵はおまえにあ
げたんだから、もうお前のものだけど、今持って帰るのも大変そうだから、お前のために
しばらく俺が預かっておいてやる。」と言ったので、私はその絵画を友人に預かってもらう
ことにしました。
しかし、後日、友人は、急に、「やっぱりこの絵画をあげる気はなくなった。契約書も交わ
していないのだから、お前に絵画をあげる必要はないはずだ。」と言ってきました。友人の
言うとおり、この絵画は、私の物ではないということになるのでしょうか?

A:まず、あなたと友人との間で交わした絵画をもらうという約束は、民法上、贈
与契約にあたります。そして、贈与契約については、民法第549条に、「贈与は
、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方
が受託をすることによって、その効力を生じる」と定されています。すなわち、贈
与契約は、特に書面を交わさなくても、両当事者の合意があれば、有効に成立
します。
しかし、一方で、民法第550条には、「書面によらない贈与は、各当事者が撤
回することができる。ただし、履行が終わった部分については、この限りではな
い」と規定されています。
この規定によると、贈与契約が有効に成立しても、契約書などの書面が交わさ
れていない場合、履行がなされていない部分の贈与については、各当事者が
自由に撤回できることになります。このような規定が置かれた趣旨は、贈与者
の軽率な行為を防止するとともに、権利移転の意思を明確にして将来の紛争を
予防することにある、といわれています。
では、本件の場合、「履行が終わった」といえるのでしょうか。
「履行が終わった」とは、絵画のような動産の場合、引渡しがなされたことをい
います。すると、本件では、絵画はいまだ友人のもとにあり、あなたはまだ実際
に絵画を受け取っていないので、「履行が終わった」とはいえず、友人は贈与契
約を撤回できるようにも思えます。
しかし、「履行が終わった」と評価される「動産の引渡し」は、現実に動産が引き
渡されたことのみを指すものではありません。たとえば、占有改定という方法が
とられた場合も、ここにいう「動産の引渡し」にあたり、「履行が終わった」と評価
されます。
この占有改定とは、「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意
思を表示」(民法第183条)することをいいます。
本件では、友人が今まで持っていた絵画を、今後は「お前のためにしばらく俺が
預かっておいてやる」と言っていますので、代理人(友人)が、自己の占有物(絵
画)を、以後本人(あなた)のために占有する(預かる)という意思表示を、友人
がしたということができます。
すると、友人は、占有改定という方法により動産の引渡しをしていますので、「履
行が終わった」ということになります。したがって、友人は贈与契約を撤回できな
いので、その絵画は、あなたのものになったということができます。

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