法律相談あれこれ
弁護士 吉川法生がお答えします
 離婚前の子どもを養育する権限(監護権)について

Q:夫と5年前に結婚し、3歳になる子どもがいます。夫は、結婚後、態度
が豹変し、私に対して暴力を振るうようになりました。子どもにまで手を上
げようとしたので、私は離婚を決意し、子どもを連れて実家に帰りました。
夫は、実家に電話してきて、離婚はしない、子どもを返せと言ってきました
が、子どもを夫に渡すつもりはありません。夫は、保育所から無断で子ども
を連れて行ってしまうかもしれません。法律で何か対策が取れないでしょうか?

A:別居した夫婦であっても、離婚していない以上、どちらも子どもに
対する親権を有しています。したがって、この相談者の方の夫にも子ど
もに対する親権があります。
離婚をする際に、どちらが子どもを養育するか(この権限を「監護権」
といいます)を決めますが、今回の場合、離婚についての意見が一致し
ていない以上、離婚が成立するのに時間がかかるので、離婚が成立する
までの間に、監護権について、決めておきたいところです。
実務上は、離婚前にも監護者を定めることができるとされています。ま
ずは、夫婦で話し合いをして当面の監護者をどちらにするか決めること
ができればいいのですが、今回のケースでは、話し合いで解決しそうに
もありませんので、裁判所でどのような手続きができるかご説明します

まず、相談者の方は、夫を相手方として、家庭裁判所に対し、子の監護
者を定める調停または審判を申し立てることになります。
調停は、原則として、相手方の住所地の家庭裁判所に、審判は子どもの
住所地の家庭裁判所に申し立てることになります。
調停は、当事者が裁判所で話し合いをして監護者を決めるものですが、
審判は、子どもの年齢、養育環境、その他の事情を考慮して裁判所が監
護者を決めます。
調停でも審判でも、家庭裁判所の調査官が、当事者から事情を聞いたり
、養育環境を調査したりして、裁判所に報告をし、その報告を受けて裁
判所が判断することになります。
しかし、調停や審判を申し立てても結論が出るまでに時間がかかる場合
があります。今回の相談者の方のように、夫が暴力的で、勝手に保育園
から連れ去ろうとする場合は、結論を待っていられません。このような
場合は、審判の結論が出るまでの間、仮に監護者を決めてほしい旨の申
立てもすることができます。
これを審判前の保全処分の申立てといいます。最も保全処分の結論が出
るにも一定の時間がかります。場合によっては、子の監護者を定める審
判の結論と同時に保全処分の結論が出る場合もあります。


タイトルイメージ
本文へジャンプ
明るい未来と幸せな生活を目指して
法律相談なら個人法人を問わずOK!