「ワンクリック詐欺」

Q:中学生の息子がケータイのサイトに「今ならゲームを無料でダウンロー
ド!」という広告があったので、クリックしたら、「ご登録ありがとうござ
いました。」と有料サイトの会員登録をしたことになり、一週間以内に登録
料金10万円を支払うように要求されてしまい、困っています。
こんなとき、登録料金を支払わなければならないのでしょうか?


A:携帯電話も一人一台は当たり前の時代になり、携帯電話の機能も進
化して、インターネットをしたり、ゲームや音楽をダウンロードしたり
・・・といろんな機能を楽しめるようになりました。今回の相談者の方
のように、子どもに持たせていることも珍しくありません。
携帯のサイトを開くと、ゲームや漫画のダウンロードの広告があります
ね。興味本位でクリックすると、中には、今回の相談者の方のお子さん
がサイトにアクセスしようとクリックしただけで、会員登録をしたこと
になるサイトがあり、高額な登録料金を請求される、というトラブルが
多発しています。このようなトラブルに巻き込まれるのは、子どもだけ
ではありません。大人の方でもよくご相談があります。
さて、今回の相談者の方は、登録料金を支払わなければならないのでし
ょうか?
結論から言うと、支払う必要はありません。
携帯のサイトにアクセスするためにクリックしただけでは、有料サイト
運営者との間で、「登録料金10万円を支払って、このサイトの会員登
録をする。」という契約は成立したことにはなりません。
では、契約とは一体どういう場合に成立するのでしょうか?
私たちは暮らしの中で様々な契約を結んでいます。例えば、スーパーで
今日の夕食の材料のお肉を買うのも売買契約という契約ですし、家を借
りて家賃を支払うのも賃貸借契約という契約です。このように契約には
様々なものがあり、どのような契約を結ぶのか、そもそも契約をするの
かしないのかも、原則的には自由です。これを法律用語では「私的自治
の原則」なんて呼び方をします。
そして、契約を結ぶ権利と義務が発生します。先ほどの賃貸借契約の例
でいうと、家を借りたあなたは、その家に住むことができるという権利
が発生する代わりに、月々決められた家賃を支払う義務が発生します。
当然のことのようですが、個々で大事なのは、先ほどの私的自治の原則
から言うと、契約の当事者、ここでは、大家さんとマンション住人とな
るあなたが、個々の家を月々この家賃で貸す・借りるということを自由
な意思で決めたということです。
あなたがこの家賃でこの家を借りることを納得したからこそ、家賃の支
払う義務が発生するのです。自由な意思で結んだ契約だから、約束を守
らないといけないのです。
それでは、今回のご相談に戻りましょう。中学生の息子さんは、携帯の
有料サイトに登録しようと思って、広告をクリックしたわけではありま
せんよね。そもそも、会員登録の申し込みをしたことにはならず、契約
自体がそもそも成立なんてしていないのです。
通常の有料サイトでは、申し込みをするときに、自分の名前や暗証番号
を入力する等、自由な意思で、決定するからこそ、登録料や月額の使用
料の支払い義務が発生するのです。
その後も、何度かそのサイトの運営者から、登録料金の請求のメールが
来ることがあると思いますが、無視してください。びっくりして思わず
お金を支払ってしまうのを悪質な業者は狙っています。こういうのをワ
ンクリック詐欺といいます。
自分だけは大丈夫、と思っていても、詐欺の手口は巧妙ですので、思わ
ず引っかかってしまうということはよくあります。慌てないで冷静に対
処しましょう。心配であれば、お近くの弁護士や消費者センターに相談
して下さいね。




法律相談あれこれ
弁護士 吉川法生がお答えします
タイトルイメージ
本文へジャンプ
明るい未来と幸せな生活を目指して
法律相談なら個人法人を問わずOK!