法律相談あれこれ
弁護士 作前千春がお答えします
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            相続人の廃除

Q:私には長男・長女がいます。夫は3年前に亡くなり、遺言によって全財産を私に遺してくれました。娘は家庭をもち、しっかりと生活しているのですが、息子は若いころから定職にも就かず警察の厄介になってばかりで、酒を飲んでは私に殴る蹴るなどの暴力を振るうという始末です。  私は、夫の遺してくれた財産を息子に一切渡したくありません。私も遺言を書いて、全財産を娘に譲ろうと思うのですが、どうでしょうか。


A:たとえば、あなたが「全財産を長女に譲る」という内容の遺言を残したとしま
す。一見、長女があなたの財産を全部相続して、長男はまったくあなたの財産
を得ることができないようにも思われます。
しかし、民法上遺留分減殺請求という制度があります(民法1028条)。
この制度は、死者の財産に依存して生活していた者のために、その遺産のうち
一定のものを留保する趣旨で規定されたものです。この制度によれば、遺言に
よってすべての財産を遺贈しても、相続人が相続の開始及び遺贈のあったこと
を知ったときから1年以内、または相続開始のときから10年以内に遺留分減殺
請求権を行使すれば、相続人は遺贈を受けた者から一定の金額を取り戻すこと
ができます(民法1042条)。
すなわち、あなたが長女にすべて財産を渡すという遺言を書いたとしても、長男
が一定の期間内に長女に対して遺留分減殺請求をすれば、長女は遺言によっ
てあなたから譲り受けた財産の一部を長男に渡さなければならないということで
す。
本件の場合では、特に生前贈与等がないとして、相続開始時の財産の4分の1
が長男の遺留分として認められそうです。
では、長男に1円も与えない手段はないのでしょうか。
本件の場合は、長男があなたに暴力を振るったりしています。そこで、相続人
の廃除という制度を利用することが考えられます。
遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して、@虐待や重大な侮辱を加
えたとき、または、A著しい非行があったとき、被相続人がこの者に相続させた
くないと思えば、自ら家庭裁判所に申し出て、この推定相続人を相続から廃除
するよう請求できます(民法892条)。
この請求については、あなたが生きている間に家庭裁判所に審判の申立をす
ることもできるし、遺言によって意思を表示することもできます。遺言によって意
思表示がされた場合は、遺言執行者によって推定相続人の廃除の請求がなさ
れることになります(民法893条)。
そこで、あなたが長男について廃除の審判を申し立てた場合、または遺言執
行者によって廃除の審判の申立がなされた場合、まず家庭裁判所が具体的事
情を考慮して、廃除の審判をすべきかどうかを決めます。そして、家庭裁判所が
@またはAのような事情があるとして廃除の審判をし、それが確定すれば、長
男は相続権を失います。すなわち、家庭裁判所による廃除の審判が確定する
ことによって、長男は長女に遺留分の減殺請求ができなくなり、あなたの財産
を1円も手にすることができないという結果になります。ただし、家庭裁判所は、
この廃除の審判をすることに慎重な態度をとっているとも言われています。
なお、廃除の審判がなされた後も、家庭裁判所に対し、いつでも廃除の取消を
請求することができます(民法894条)。あなたがやはり長男にも少しは財産を
残したいと考えが変わった場合には、いつでも廃除の取り消しが可能であると
いうことです。これは被相続人によってなされるものであるため、長男から廃除
の取消請求をすることはできません。