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民法(相続)の改正2(遺言制度等)

2019.03.10 > 新着情報

 前回に続き、相続法改正の説明をいたします。
 今回は、自筆証書遺言の改正点と預貯金の扱いについてです。

(3)自筆証書遺言について自筆によらない目録の利用を認めたこと

   自筆証書遺言につきましては、遺言者の意思の正確さや確実さを担 保するため、厳格さが求められています。
   具体的には、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに 印を押す必要があります。また、自筆証書遺言中の加除その他の変更  は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこ れに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生 じません。

   そこで、自筆証書遺言の利用を促進するため、今回の改正で、自筆 証書遺言の方式を緩和することとされました。すなわち、自筆証書遺言 において、遺言本文に添付する財産目録については自筆であることを要 しない旨が定められました。これにより、目録をパソコン等で作成した り、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳のコピー等を添付してそれを 目録として使用することができるようになりました。もっとも、偽造等 防止のため、財産目録毎への署名押印は必要とされています。

(4)自筆証書遺言の保管制度

   公証役場の公証人によって作成される公正証書遺言につきまして  は、公証役場で原本が保管されるとともに、遺言者が亡くなって以降は 遺言検索システムによって、その存否等の照会が可能となっています  (平成元年以降の作成分)。
   これに対し、自筆証書遺言は、紛失、隠匿、変造のおそれがあり、 また、遺産分割終了後に自筆証書遺言が発見されることもあります。さ らには、家庭裁判所による検認手続が必要でした。

   そこで、自筆証書遺言を確実に保管し、相続人等が相続開始後にそ の存在を容易に把握することができるように、自筆証書遺言の保管制度 が創設されました。この自筆証書遺言の保管申請は、遺言書保管所であ る法務局に遺言者が自ら出頭して行うことになります。
   遺言者の死亡後、関係相続人等は、遺言書の有無について調査する ことができ、遺言書情報証明書の交付及び当該遺言書の閲覧請求ができ ます。そして、遺言書保管所に保管された遺言につきましては、検認の 手続が不要とされています。

(5)預貯金債権について、一定の範囲内で単独行使を認め、仮分割仮処 分の要件を緩和したこと

   従前、遺産のうちの預貯金につきましては、相続開始により当然に 各相続人に相続分に応じて帰属し、各相続人が単独で権利行使ができる とされていました。
   ところが、平成28年の最高裁判決によって、預貯金は相続開始と 同時に当然に相続分に応じて分割されることなく遺産分割の対象となる と判示されました。このため、遺産分割が成立するまでは、預貯金の払 戻しができないとなったわけです。
   しかし、葬儀費用や被相続人の債務の支払い、相続人の生活費等一 切払戻しができないとすると、相続人にとっても困窮しかねない事態が 生じかねません。

   そこで、今回の改正では、裁判所の判断を経ることなく、相続開始 時の預貯金債権の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額で   150万円を超えない金額については、各相続人が単独行使できると規 定されました。
   なお、これにより払戻された預貯金は、その相続人が遺産の一部分 割により取得したものとみなされます。

   次に、上記の上限額を超える払戻しを受ける必要がある場合、①本案 である遺産分割の審判又は調停が係属しているころ、②仮払いの必要があ ると裁判所が判断したこと、③仮処分の形態として仮分割の方法によるこ と、④他の共同相続人の利益を害しないことの要件が満たされれば、家庭 裁判所の決定により払戻しが可能となりました。

   施行日は、(3)につき平成31年1月13日、(4)・(5)に つき平成31年7月1日です。