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民事執行法の改正(1)

2022.07.20 > 新着情報

 判決で金銭の支払いが命じられても相手方がその支払いをしない場合、自己の権利を実現するためには強制執行などの民事執行手続によることが必要です。

 しかし、せっかく苦労して判決を得て強制執行しようとしても、その対象となる相手方の財産が見つからなければ、結局、判決が画に描いた餅になりかねません。

 この弊害をとり除くため、平成15年、民事執行法が改正され、「財産開示制度」という手続が設けられました。ところが、財産開示手続の申立件数は低調に推移し、期待された機能が果たされていない状態が続きました。

 そこで、令和元年5月17日に公布され、令和2年4月1日に施行された民事執行法の改正により、実効的な手続が取り入れられることになりました。

 また、この改正により、暴力団員の競売手続からの排除、子の引渡しというこれまでなかった制度の新設、さらに差押禁止債権等に関する規律が整いました。

 今回は、このうちの財産開示制度の一部につき、ご説明します。

 財産開示手続とは、権利実現の実効性を確保する見地から、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり、債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述する手続となります。債務者は、陳述によって知り得た債務者の財産に対し、別途、強制執行の申立をする必要があります

債権者は、強制執行の対象となる債務者の財産を特定して差押えの申し立てをしなければならないのが原則ですが、債務者がどういう資産をもっているのかを探し出すことは債権者にとって困難な場合が多いことから、平成15年の民事執行法改正により導入された制度です。

 しかし、その申立件数は少なく、実行性に乏しいという意見が多く、今回、次の2点が改正されました。このほかにも、第三者からの債務者財産にかかる情報取得制度が創設されました。これについては、次回、ご説明します。

 これまでは財産開示手続の申立権者は限定されており、金銭債権についての強制執行の申立をするのに必要とされる債務名義のうち確定判決等を有する者に限定されていました。

 改正法では、金銭債権についての強制執行の申立をするのに必要とされる債務名義であれば、いずれの種類のものであっても、財産開示手続の申立が可能となりました。これにより、例えば、公正証書(例えば、養育費の支払)、仮執行宣言付判決、支払督促による申立もできるようになりました。

 また、これまで財産開示手続において、正当な理由なく、開示義務者が財産開示期日に出頭しなかったり、または、陳述を拒んだり、虚偽の陳述をした場合、従前の制裁は30万円以下の科料とされていました。しかし、今回の改正により、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が科されることとなり、罰則が大幅に強化されました。

 財産開示手続は、財産開示申立権者による申立、裁判所による財産開示手続の実施決定、この決定の債務者への送達、財産開示期日における手続実施という流れで手続は進んでいきます。