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民法(債権関係)の改正1(定型約款)

2022.01.14 > 新着情報

現代社会においては、大量の取引を迅速かつ安定的に行うために、契約の一方当事者があらかじめ一定の契約条項を定めた約款を利用して取引を行うことが多数存在していますが、こうした約款に関して旧民法は特段の規定を設けていませんでした。
民法の原則は、契約の当事者は契約の内容を確認して意思表示をしなければ契約に拘束されないわけですが、約款を用いた取引をする多くの顧客は、そこに記載された個別の条項の内容を認識していないのが実状でした。
また、約款を利用して取引が始まったとしても、法令の変更等や経済状況の変動等に対応するため、契約締結後に、約款の内容を変更する必要が生ずることもあります。しかし、これも民法の原則では相手方の同意を要するわけですが、実務においては、約款中に設けられた一方的な変更をすることがある旨の条項を根拠にするなどして、契約の内容を一方的に変更することが現実に行われています。

以上の問題点を踏まえ、新民法においては、約款を用いた取引の法的安定性を確保するため、民法に定型約款に関する規定を新設しました(第548条の2~第548条の4)。

新民法では、

 ① ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、

 ② その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義した上で、

 ③ 定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体を「定型約款」と定義しています(第548条の2第1項)。

そして、当事者において、
 ① 定型約款を契約内容とする旨を合意し、または

 ② 定型約款を準備したものがあらかじめその定型約款の内容とする旨を相手方に表示していたときには、定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなすこととしました(みなし合意)。

もっとも、相手方の権利を制限し、または、相手方の義務を加重する条項であって、信義則(民法第1条第2項参照)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められる条項については、合意をしなかったものとみなされます(新法第548条の2第2項)。

次に、定型約款の変更については、その変更が、
 ① 相手方の一般的利益に適合するか、または、

 ② 契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更の内容の相当性、民法の定めにより変更をすることがある旨の規定の有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的であるといえる場合には、定型約款の条項の変更が認められます(1項)。
ただし、変更の効力発生時期の定め、及び定型約款変更と変更の内容を周知しなければならず、これを効力発生時までに行わなければ変更の効力を生じないとされています(2項及び3項)。