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民法の改正2(法定利率)

2022.02.16 > 新着情報

 利息には、当事者の特約によって生ずる約定利息と、法律の規定によって生じる法定利息とがあります。約定利息は、暴利や高利を規制する利息制限法や貸金業法による制限はありますが、原則として当時者の約束によって定められます。

 このような約定利息の約束がない場合や、法定利息の利率を定めたのが旧民法第404条で、その制定当時の市中における一般的な貸出金利を前提として法定利率を年5パーセントとされていました。

しかし、その後110年余りもの間、見直しがされていないため、昨今の超低金利の情勢の下では法定利率が市中金利を大きく上回る状態が続いていました。

このように、法定利率と市場金利の大きな解離を放置することは不合理であることから、現在の市中金利の水準に合わせて法定利率を引き下げる必要があります。他方、市場金利は将来変動する可能性があり、その都度、民法を改正するのは適切ではありません。そこで、今回、法定利率に関しては、次のような改正がなされました。

①民法制定以来年5パーセントとされてきた法定利率について、昨今では市中金利を大きく上回る状態が続いているため、これを年3パーセントに引き下げている(新法第404条2項)。

②市中の金利動向は今後とも変動し、将来的には現在の金利水準と大きく乖離する状況も予測されることから、そのような金利水準の変動に備え、一定の指標を標準として、3年毎に法定利率が自動的に見直される変動制を導入している(新法第404条。)

③法定利率の引き下げ及び変動制の導入に伴う将来の法定利率の変動を踏まえて、法定利率の主な適用局面である利息の算定(新法第404条第1項)、遅延損害金の算定(新法第419条)及び中間利息の控除額の算定(新法第417条の2、第722条第1項)においていつの時点の法定利率を用いるのかを定めている。

③の中間利息控除は、主に不法行為に基づく損害賠償請求権の損害の算定において、将来発生するため現時点で金額未確定の逸失利益や費用を現時点で算定して損害額を確定する必要があることから、逸失利益等を現在価値に換算するために損害賠償額算定の基準時から逸失利益を得られたであろう時までの利息相当額(中間利息)を控除することをいいます。

多くは交通事故により後遺障がいが残った場合、将来、障がいの等級に応じた労働能力が失われることから労働能力喪失により失われた利益(将来の得べかりし収入)を算定するに当たり、損害賠償金自体は支払時に前倒して支払われることになりますので、利息相当額を控除するという形で問題になります。したがいまして、利率が高ければ高いほど逸失利益の金額は少なくなります。

これが今回の改正で5%から3パーセントに引き下げられたことから逸失利益の計算も市場に近い数字でなされることになりました。そして、その基準時は不法行為の時、交通事故の場合であれば事故日とされました。