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民法の改正5(保証その2)

2022.05.26 > 新着情報

前回に引き続き、民法改正中保証に関する改正事項の

③根保証契約の見直しに関するもの

④公証人による保証意思確認の手続の新設に関するもの

について、説明いたします。

まず、③についてです。

平成16年の民法改正により、保証人が個人であって、金銭を貸し付ける等によって負担する借入金等の債務を貸付金等の範囲に含む貸金等根保証契約については、保証すべき債務が保証契約の締結後に追加されて保証人の責任が過大なものとなる可能性があるため、極度額(上限額のこと)を定めなければならないとされていました。しかし、この規律の対象とされた貸金等根保証契約以外の根保証契約についても、個人である保証人が予想を超える責任を負うおそれがありえます。

例えば、不動産の賃借人の債務を主債務とする根保証契約において、賃借人が長期にわたり賃料を滞納した事案などです。

そこで、新法では、規律の対象を保証人が個人である根保証契約(個人根保証契約)一般に拡大することとし、個人根保証契約は、主債務者(借主等のこと)の範囲に含まれる債務の種別を問わず、書面又は電磁的記録で、極度額を定めなければその効力を生じないとしました。

この極度額は、保証契約の締結の時点で確定的な金額を書面又は電磁的記録上定めておかなければなりませんので、「極度額は賃料の5ヵ月分」と記載されているのみでは無効となります。したがって、極度額は例えば「40万円」と記載する必要があります。もっとも、契約書に極度額は賃料の5ヵ月分と記載されているだけでなく、その契約書に賃料の月額が8万円と記載されるなどして、極度額は40万円であると確定することができるときは、その個人根保証契約は有効です。

次に④です。

事業のために負担した貸金等債務についての保証契約においては、その保証債務の額が多額になりがちであり、保証人の生活が破綻する例も相当数存在しています。

しかし、保証契約は個人的な関係等に基づいて行われることが多いことや、保証契約を結ぶ際には現実に支払いを求められることになるかどうかがわからないこともあって、保証人の中には、そのリスクを十分に自覚せず、安易に保証契約を締結してしまうことが少なくないと指摘されていました。

そこで、新法で、保証人が個人である事業のために負担した借入金等債務についての保証契約について、中小企業の資金調達に支障が生じないようにしつつ、個人がリスクを十分に自覚せず安易に保証人になることを防止するため、公的機関である公証人が保証人になろうとする者の保証の意思を事前に確認することとし、この意思確認の手続を経ていない保証契約を無効としました。

ただし、主債務者である株式会社の取締役の地位にあるものが保証人になる場合など、一定の場合については、主債務者の状況を十分に把握することができる立場にあり、そのリスクを十分に認識せずに保証契約を締結するおそれが低いと考えられることもあり、公証人による意思確認を不要としました。