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遺産分割協議の仕方

2018.11.24 > 法律Q&A

 Q.先日、母が亡くなりました。父も既に亡くなっていますので、相続人は私を含めた子4人です。母の遺産は、母が住んでいた土地と建物、預貯金が約2000万円、株  式などの有価証券が約1000万円です。母は遺言は残していませんでした。
   これからどのようにして、母の遺産を分けたらいいのでしょうか。

A.遺言があると、法律の規定に優先して、遺言した人、本件ではお母さんの死亡と同時に、遺言書に書かれている内容どおりの法的な効力が発生します。
  遺言がない場合は、相続人間で話し合って分け方を決めることになります。この話し合いを遺産分割協議といいます。

  この遺産分割協議は相続人全員でしなければなりません。全員が一同に集まって協議することが望ましいでしょうが、誰かが原案を作って他の相続人に承諾を求める方法 でも差し支えありません。要は、相続人全員が承諾すること が必要です。
  共同相続人の中に行方不明者がいて、その生死も不明な場合には、家庭裁判所にて不在者財産管理人を決めてもらい、この者にも協議に加わってもらうことになります。
 また、未成年者とその親がともに相続人である場合には、両者の利害関係が相反することになります。そして、家庭裁判所に未成年者のための特別代理人を選任してもら  い、この者と協議することになります。

  遺産分割の協議に入る前提として、遺産を特定する必要があります。遺産となる財産は、不動産、預貯金、株式などのプラスの財産のみならず、借金のようなマイナスの 財産も含まれます。
  遺産の範囲が特定しない場合、例えば、「もっと預金があるはずだ」とか、「他にも何か遺産があるはずだ」などと、遺産の内容に争いがあると、遺産分割協議はできな くなります。その場合は、裁判所に訴訟を提起して遺産の範囲を決めてもらうことになります。
  そして、相続人全員で遺産の範囲を特定したうえで、それをどう分けるかの話合いに入ることになります。

  遺産の分け方は、相続人間の話合いで、自由に決めることができます。相続人の一人が財産全部を取得することも、取得する割合が相続分と異なっていても全員が同意す れば問題ありません。もっとも、通常は、分け方を考える場合、法定相続分に応じて、あるいは、それを基準として調整しながら分けることが多いでしょう。
  ただし、本件では、遺産の中に不動産が含まれていますので、この不動産の評価をどう考えるかということが問題になってきます。次に、不動産を4つに分筆するという ことは現実的ではありません。そこで、兄弟のうちの誰かが不動産を相続するというのが現実的かもしれません。特に、そこに兄弟のうちの1人が住んでいればその方が取 得することが検討されることになるでしょう。そして、不動産を評価した金額が遺産の4分の1を上回る場合、代償金という形で残りの3人に支払うのかどうかということ になるでしょう。あるいは、こうした処理が難しければ、不動産を売却して、売買代金を含めた預貯金残を分けるということになるのかもしれません。

  なお、遺産をいつまでに分けなければいけないかについて、期限の定めはありません。
  よく相続税の申告期限までに遺産分割の協議を成立させなければいけないと誤解している人がいますが、これは間違いです。相続税申告期限内に遺産分割の話合いができ なければ、未分割として、一旦法定相続分に応じた取得額を申告しておき、あとで法定相続分と異なる分け方が決まったときに 修正(更正)申告をすればよいのです。
  遺産分割の協議は、短期間で成立させようとすると無理が生じますし、逆に、放置しておくと、財産の管理について争いが生じたり、相続人が死亡して相続関係が複雑に なることもあります。そこで、葬儀等が一段落したところを見計らって、身近な相続人が音頭をとり、遺産分割の話合いを始めるのもひとつです。

  遺産分割の協議ができた時には、その内容を遺産分割協議書にします。不動産の所有名義を移転する時や、被相続人名義の預貯金をおろすときには必要ですし、また、遺 産分割の協議が成立したことの証明になるからです。
  相続人間で協議ができなかったり、まとまらなかった場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申立て、解決をはかることもできます。