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民法(相続)の改正3(遺留分制度等)

2019.03.10 > 新着情報

 前回、前々回に続き、相続法改正の説明をいたします。今回は最終回で、対抗問題、相続開始後の遺産の処分、遺留分に関する改正点、特別寄与制度です。

(6)相続させる旨の遺言による権利承継を対抗問題としたこと 
  
 遺言により相続分の指定や遺産分割方法の指定により不動産、動産、債権を取得した場合、従前は登記などの対抗要件なくしてその権利を第三者に主張できるとされていました。
  しかし、今回の改正により、法定相続分を超える部分については、対抗要件(不動産については登記、動産については引渡、債権については通知等)を備えなければ、第三者に主張できないと改正されました。これは、遺言の内容を知り得ない相続債権者の利益を考慮しての改正です。
      
(7)相続開始後に処分された遺産について、遺産分割の対象とする道を開いたこと
  
 従前、家庭裁判所の実務では、遺産分割調停などの対象となる遺産は、相続開始時に存在し、かつ、遺産分割時に存在する財産とされていますので、相続開始後に処分された財産は、相続人全員の合意がない限り、遺産分割の対象から除外されます。そのため、相続人は、別途、法定相続分又は指定相続分に基づき、処分をした者に対して、不法行為または不当利得に基づく請求をする必要がありますが、必ずしもこの請求が可能とは限らず、結果として処分した者が利得するということが指摘されていました。
  
 他方、前回(5)で述べましたとおり、改正法では、共同相続人は、遺産分割前に遺産に属する預貯金債権について、一定の範囲で単独で権利行使することができ、権利行使をした当該預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割により取得したものとみなすとされることになりました。
 このこととの関連で、預貯金債権の払戻し等、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合についても、公平の理念から、遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことはできるとされました。
 その要件は、相続開始時に被相続人の遺産に属する財産が遺産の分割前に処分されたこと、及び共同相続人全員の同意があることです。なお、共同相続人の一人又は数人が財産を処分した場合は、処分した者の同意を得ることは不要です。

(8)遺留分減殺請求権を遺留分侵害額請求権として金銭債権化し、また、遺留分額算定の基礎となる財産の範囲を変更したこと
  
①遺留分侵害額請求権
  従前、遺留分減額請求権を行使すると、減額の対象となった目的物 の所有権は遺留分権利者に戻っていました(例えば、不動産であれば共 有持分が戻り、持分移転登記手続を求めることになります)。
   
 今回の改正では、これを金銭債権化し、「遺留分減額請求権」という表現が、「遺留分侵害額請求権」と改められました。これにより、遺留分権利者は、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できることになりました。
  他方、受遺者又は受贈者が金銭を準備できない場合があるのではないかということから、受遺者又は受贈者の申出により、裁判所が金銭による返還に期限の許与を与えることができるとされました。
  
②遺留分算定の基礎となる財産の範囲の変更
   従前、遺留分算定の基礎となる財産につきましては、相続人に対する贈与は相続開始1年間にしたものは全て、それより前にした贈与は特別受益に該当するものとされていましたが、今回の改正により、相続人に対する贈与については相続開始前の10年間にされたものに限り、かつ、価額につき婚姻もしくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限るとされました。

(9)相続人以外の親族が被相続人の療養看護等に尽くした場合における特別寄与制度を創設したこと
   
 従前、寄与分は相続人にのみ認められていましたので、相続人以外の者が被相続人の事業に関する労務の提供や療養看護等に努めて被相続人の財産の維持又は増加に貢献をしても、遺産の分配を請求することはできませんでした。一方で、相続人であれば何らの寄与行為を行わなかった者も遺産の分配を受けられるため、公平を欠くのではないかとの意見も多くありました。

 そこで、このような相続人以外の者の貢献を考慮し、相続における実質的公平を図る観点から、寄与行為をした相続人以外の者にも一定の財産を取得させる制度が設けられることとなりました。
 具体的には、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者、及び民法891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができるものとされました。
 特別寄与料を請求し得る者は、被相続人の親族ですが、親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。したがいまして、内縁の妻などは除かれましたが、この点は法制審議会の最終段階まで見解が対立したようです。
   
  施行日は、平成31年7月1日です。